アメリカの自動車保険会社、ダイレクトオートインシュランスによると、世界で最も多い交通違反はスピード違反だそうです。スピード違反は人を死に至らしめる可能性の高い違反であり、これを取り締まるために日本のみならず、世界各国で様々な取り組みが行われてきました。
しかし、このフランスの小さな村がやったような例は見たことがありません。オービスやスピードバンプなどの抑止手段の代わりに、この村は布袋寅泰のギターのようなデザインを使ってドライバーを混乱させる手に出たのです。
スピード違反をやめさせるには?

伝統的なル・マンの舞台からわずか1時間。フランス西部メーヌ=エ=ロワール県の自治区アンジェにある小さな町ボーネでは、車が通行すべき場所を示す白線に、あえて落書きをすることにしました。
車線の区切りがわからないと、ドライバーは自分がどこにいるべきか、あるいは他のドライバーがどこにいるべきかがわからなくなり、これらを判断するためにスピードを落とすようになります。このようにして村はスピード違反を減らそうと考えました。
この攻めたスピード違反対策が施される前は、町人たちは通行人が制限速度の2倍のスピードで町を走り抜けることに不満を漏らしていました。
道路開発責任者であるメーヌ=エ=ロワール県ロワール=オシオン市の副市長、グレゴワール・ジョーノー氏はTFIインフォの取材に対し、「1日あたり2,300台もの車が走っていますが、フランスの他の田舎町と同じように、スピード違反の車が多いのです。ドライバーは高速道路交通法を守らないので、別の対策を講じました。」と述べています。
混乱したドライバーは実際にスピード違反を止めることができるのか?

町は約80万円を支払って、道路に布袋寅泰のギターをグニャグニャさせたような線を引きました。ちなみに、安全性を高めるためにこのような施策に出たわけですから、雨の中でも車やバイクがトラクションを失わないよう、白線を引く際に特殊な滑り止め材を使用したそうです。
この施策に対し、あるドライバーは、「車線がとてもわかりにくかったので、自分がどこにいるべきかを把握するためにスピードを落とさなければならなかった」と語っています。対してもう一人のドライバーは、「最初のうちはスピードを落としましたが、今は慣れてしまったので、いつものスピードで運転するようになりました」とのべています。
基本的に、この2人のインタビューは、地元以外の人々にとっては、グニャグニャな白線は効果があることを証明しています。
しかし、2人目のインタビューのように地元の人々にとっては、路線の目新しさはすぐに消えてしまうようです。
フランスでの運転は安全か?

この白線は遊びでできたものではありません。フランスでは車道での負傷者や死亡者が増えています。この白線のような取り組みは、フランスでの運転をより安全にするためのものにすぎません。現状では、この白線が実際に人々の安全を守っていることを示唆するデータは、インタビュー以外にはありません。
その一方で、この線は行動心理学的に興味深い研究でもあります。この大胆な施策がどのような影響を与えたのか、今後の発表に期待です。