質量の大きい車両の方が、より大きなダメージを与えることは驚くことではありませんが、道路安全保険協会(IIHS)の最近の研究によると、大型SUVがサイクリストに与える危険は、それとはニュアンスが異なることが示唆されています。
明確なパターンが見つかる
IIHSの統計学者であるサム・モンフォートが率いた研究では、自動車やSUVによるサイクリストの負傷率や重症度だけでなく、被害者に与えるダメージの与え方についても調査しました。
モンフォートは、国際自動車医療センターの歩行者委員会がまとめたミシガン州の71件の自転車事故を調査しました。いずれも15歳以上のサイクリストと、1台のSUVまたはそれ以外の車の事故です。彼の分析では、明確なパターンが見つかりました。
身体全体に対する外傷は、SUVの事故の方が55%も高い
「SUVは、ライダーを車のボンネットに跳ね上げるのではなく、轢かれる可能性のある場所に倒す傾向があります。それはおそらく、SUVの高いフロントエンドが、サイクリストの重心の上に当たるからでしょう。」とモンフォート氏は述べています。
どの事故でも、下半身の負傷が多く、重傷者では頭部の負傷が多いとのこと。頭部外傷の割合は、その事故がサイクリストにとってどれだけ危険なものであるかを示す指標として有効です。
モンフォート氏は、Abbreviated Injury Scale(身体の部位別に傷害を評価するために用いられる業界標準のテスト)を使用し、SUVの事故では他の車の事故に比べて頭部傷害の平均スコアが63%高いことを発見しました。
注目すべきは、他の部位の傷害については、SUVとそのほかの車の間で統計的に有意な差が無いことがわかったことです。しかし、身体全体に対する外傷は、SUVの事故の方が55%も高いことが分かりました。
SUVの車輪または足回りが頭部損傷の82%を占めている
モンフォールは、頭部外傷がなぜこれほどまでに多いのかを解明するために、最初の衝撃の後、サイクリストがどのように動いたかという情報がある44件の事故を調べました。これらの事故では、SUV のみがサイクリストを轢いて怪我をさせました。
また、SUVはサイクリストを地面に叩きつけた後、車輪や足回りで最も多くの負傷者を出す傾向があることがデータから示唆されました。車両のどの部分がサイクリストを傷つけたかについての情報がある8件の事故では、SUVの車輪または足回りが頭部損傷の82%を占めています。
このように、SUVがサイクリストにぶつかるとどんなことが起こるか、悲惨な光景が描かれています。
日本での自転車対自動車の事故は年々減少、しかし
日本は自転車が一般的に利用される国であり、自転車による交通事故も多く発生しています。特に自転車と自動車の接触事故は深刻な問題となっています。
2019年に発表された警察庁の白書によると、日本における交通事故のうち、自転車が関わる事故は全体の22.4%を占めており、そのうち自転車と自動車の接触事故が74.9%を占めています。また、自転車事故の死亡者数も全交通事故のうち11.4%を占めています。
自転車と自動車の接触事故の原因としては、自転車が信号無視や左右の確認不足などで車道に出たり、自動車が自転車に対して注意不足で接触してしまうことが多いようです。
日本での自転車対自動車の事故は年々減少傾向にありますが、それでもまだまだ多く発生しており、安全な交通環境の実現に向けては、運転者の意識改革や交通ルールの徹底、道路環境の整備などが求められています。