車をぶつけてしまう事は誰にでも起こりうることです。不運なことに、フェラーリ・F40をポールに突っ込んでしまったこの人にも起こりました。80年代の古いスーパーカーを運転したことのある方なら、視界が冗談のように悪いことはご存じでしょう。ましてやF40のような貴重な車を運転するストレスは、さらに車をぶつけるリスクが高めることになります。
このF40がポールにぶつかるのを見るのは気が滅入りますが、ドライバーをあまり責めないでください。
もう少し手助けがあれば…
TikTokに投稿されたこの事件は、カリフォルニア州タスティンにあるマルコーニ自動車博物館で起こりました。
この自動車博物館はオリジナルのバットモービルをはじめ、歴史的なF1カーや数台のフェラーリ、数台のレーシングカーなど100台以上のコレクションを展示し、イベントを開催していることでも知られています。F40がコレクションの一部だったのか、それともオーナーがいて保管されていたのかは不明です。
館内では3人の傍観者が車の移動を見守っていたにもかかわらず、誰もドライバーを誘導していなかったようで、そのうちの1人は、この出来事を記録しているポールの真横にいたにもかかわらず、手遅れになるまでF40が危険な状態にあることに気づかなかったとのこと。
ミスは起こるものです。しかし、特に2~3億円以上の価値がある車だけに、もう少し手助けがあれば簡単に回避できたかもしれません。
Tiktokに上げられた動画は気味の悪い音がして突然終わります。ダメージは深刻ではなさそうですが、F40は悪名高いほど薄いカーボンファイバーパネルを使用しており、100%元通りに直すと言うのは厳しそうです。
レーシングカーの魂が宿るスーパーカーのレジェンド
フェラーリ F40は、1987年にフェラーリ創業40周年を祝うために誕生した、その名が示す通り伝説的なスーパーカーです。エンツォ・フェラーリ自身が最後に企画したモデルであり、まさに「そのままレースに出られる市販車」というコンセプトを体現するスパルタンな仕様により、多くのカーファンを魅了しました。
エンツォ・フェラーリの想いを体現
フェラーリの創設者であるエンツォ・フェラーリ自身が手がけたF40は、彼の情熱と技術の結晶です。このモデルが彼の最後のプロジェクトとなったことからも、その特別性が窺えます。剛性を高めたチューブラー・スペースフレームに、カーボン素材を活用したボディが組み合わさり、独特なデザインが完成しました。特に前後に張り出したフェンダーや巨大なリアウィングは、まさにレーシングカーのような外観を持っています。
力強いエンジンと驚異的な性能
F40の魅力は、そのエンジンと驚異的な性能にもあります。3リッターのV8ツインターボエンジンは、478馬力の最高出力と58.8kgmのトルクを発揮し、わずか1.1トンのボディを推進します。0から100km/hへの加速はわずか4.1秒、最高速度は当時としては破格の324km/hを記録しました。そのスリリングな急加速やドッカンターボと呼ばれる独特の加速感は、運転者の心を鷲掴みにしました。
レーシングカーのようなインテリア
内部もスポーティさと機能性が際立ちます。室内はスパルタンで、余計な装備は一切排除され、必要最小限のものだけが残されました。ドアノブはなく、ワイヤーを引いてドアを開閉する仕組みは、まさにレーシングカーを思わせるディテールです。エアコンや走行に必要な装置のみが備えられ、その徹底ぶりはまさにパフォーマンスを追求するレーシングカーの哲学を体現しています。
日本でも”走る不動産”としての人気
日本でもF40は大きな話題となりました。高額な価格にも関わらず、多くの注文が殺到しました。バブル経済の時代とも重なり、日本正規輸入台数は59台に限られたため、現在でもその希少性は高いものとなっています。価格がオークションなどで2億円を超えることもあることから、「走る不動産」と称されるほどの価値を持つスーパーカーと言えるでしょう。
フェラーリ F40は、エンツォ・フェラーリの情熱と技術、そしてスーパーカーへの追求心が詰まった伝説的な車です。そのスパルタンな外観と強力なエンジン、驚異的な性能は、今でも多くのカーファンの心を魅了し続けています。根強い人気と共に、F40は自動車史に輝く存在として永遠に語り継がれることでしょう。