シートヒーターほど、寒さに凍える者を素早く救うものはない。しかし、このシートヒーターは100%安全なのだろうか?車は何年にもわたって長い道のりを歩んできたが、改善が必要な部分もあり、シートヒーターも実はその1つ。実際、一部の専門家は、過度の使用が火傷につながる可能性があることを懸念しており、あるドライバーは訴訟まで起こした。
シートヒーターの仕組み
シートヒーターの内部の仕組みはそれほど複雑ではなく、温熱毛布、ヘアドライヤー、給湯器で使用されているのと同じ原理だ。
シートの内部には、ヒーターの基となる電熱線が搭載されている。スイッチを押すことによって電熱線が発熱し、これがシートクッションを介して上昇、乗員を温める仕組みだ。
万が一にも問題が起きないよう、シートヒーターにはサーモスタットが付いており、特定の温度に達すると、発熱体は自動的にオフになるはず。しかし、一部の車は遮断するサーモスタットを搭載していないため、熱くなりすぎた場合にをオフにするのは乗員次第という場合もある。
トースト肌症候群
シートヒーターは優れているが、長時間使用すると、トースト肌症候群になる可能性がある。トースト肌症候群とは、直接はヤケドしていなくても、長時間熱源にさらされることによって、皮膚に赤や茶色の発疹が出る状態のことだ。これはシートヒーターに限らず、電気カーペットや電気毛布でも起こりうる症状だ。特に子どもは肌が敏感なので症状が出やすく、注意が必要だ。
トースト肌症候群の悪い点は、見つけにくいことだ。シートヒーターを使う場合、ほとんどの人がズボンをはくので、他の人は赤くなった皮膚を見つけることができない。 症状はゆっくりと現れる可能性があり、気付くほど皮膚が痛む頃には、すでに重大な損傷がある事もある。
シートヒーターで火傷を負った事例
2018年11月、アメリカのミズーリ州に住む男性は、旅行中ににシボレー・シルバラードのシートヒーターを誤ってオンにしてしまった。シボレー・シルバラードのシートヒーターは、特定の温度に達するとシートがオフになる自動シャットオフ機能がなかった。男性は下半身がマヒしており、足に感覚はない。シートヒーターが危険な熱レベルまで熱くなっても、熱さを感じる事が出来なかった。
家に着くと、彼は火傷を負っていることに気づいた。その後、地元の病院に行ったところ、上肢にⅢ度熱傷(皮下脂肪織まで達する熱傷)、下肢にⅡ度熱傷(真皮熱傷)があると診断された。「計り知れない肉体的苦痛と精神的苦痛」を経験した被害者のリハビリには数か月を要した。 そして、シャットオフスイッチを含めなかったとして、ゼネラルモーターズを相手に訴訟を起こした。
シートヒーターが麻痺した人を火傷させたのはこれが初めてではない。他にも多くの事例があるので、足が麻痺している人はシートヒーターを使用しないことを勧める。 シートヒーター付きの車の購入を検討している場合は、基本的には搭載されているが、搭載されていない可能性もるので、車に自動シャットオフ機能が付いているかどうかを確認することをお勧めする。