街を走る乗用車のほとんどはドアミラーを採用した車だ。それに対してタクシーのほとんどはフェンダーミラーを採用している。その理由を調査してみた。
フェンダーミラーと歴史
フェンダーミラーとはその名の通り、フロントフェンダー上部に装着されたミラーの事。その歴史は1950年代のイギリスにまで遡る。黎明期の自動車は非力で、重量物である屋根を着けるのは主流ではなかった。そのため当時は馬車のようにむき出しだったり、幌が付いた車が多く、風防にバックミラーを装着していた。やがてエンジンの出力も上がり、居住性の向上の為に屋根も付けられるようになり、それまでの風防からドアやフロントフェンダーに取り付けられるようになった。
フェンダーミラーからドアミラーへ
欧米ではに1960年代の初頭には既にドアミラーが主流となっていたが、日本で主流になるのはその20年後の1980年代から。当時フェンダーミラー以外が違法だった日本に車を輸出するには、フェンダーミラーである必要があった。ゆえに外国のメーカーは輸出前にミラーの位置を変更する必要があり、これは非課税障壁になるという事で1983年に規制が撤廃された。ちなみに国産初のドアミラー車は日産のパルサーエクサだ。
フェンダーミラーのメリットと消えた理由
フェンダーミラーには
・ミラーを見るときの視線の移動距離が短い
・ミラーに映る範囲が広く、死角も少ない
・前輪の場所が把握しやすい
・車体からのはみ出しが少なく狭い道でも通れる
といったメリットがあった。しかしフロントフェンダー上にミラーが存在することで、歩行者と接触してしまった際、歩行者により大きなダメージを与えてしまう安全性の理由により、次第にその姿を消していった。
ここで本題:なぜタクシーはフェンダーミラーなのか?
お待たせしました、ここで本題。安全性を理由に姿を消していったフェンダーミラーだが、なぜそれでもタクシーはフェンダーミラーを採用しているのか?それは上記メリットに加えてタクシーならではの「乗客への配慮」があるからだ。助手席側のミラーを確認する際、ちらちらとミラーを見ることになるが、これは助手席の乗客からすれば「なんかめっちゃ見てくるな」と嫌な気持ちになる人もいるだろう。乗客がリラックスできるようにする為に、タクシーはフェンダーミラーを採用しているのだ。
おまけ
自分の愛車をフェンダーミラー化させたいと思った事がある人もいるだろう。実はこの行為自体は違法ではない。ドアミラーとフェンダーミラーの両方を着ける事も合法だ(費用は安くないだろうが)。実際にフェンダーミラー化する際はDIYではなく、プロの元へ相談に行く事を強く勧める。