自動車には、乗員を保護するための高度な自動車安全機能が数多く搭載されています。それは何十年もの間、エンジニアたちが自動車事故による怪我や損傷を防ぐ方法を考えた結果です。その中でも今は使われていないものがいくつかあります。そのひとつが、あまり知られていない「水入りバンパー」と呼ばれる発明品です。この車の安全システムはどのように機能し、効果があったのでしょうか。そしてなぜ消えてしまったのでしょうか。
水入りバンパーの機能

このバンパー技術は1960年代に登場し、低衝撃の衝突や一部の高衝撃の衝突に役立つことが証明されました。時速20〜40kmで走行中の車両が、同じ水入りバンパーを装着した他の車両に衝突した場合、発生するダメージを軽減し、両車両の乗員をより良く保護することができます。
ジョン・リッチ氏が発明した水入りバンパーは、「ハイドロリックバンパー」と呼ばれていました。厚さ1/4インチの塩化ビニール製でできています。そしてバンパー内に水室が設置されていました。衝撃が加わるとバンパーは水を放出します。衝突後ドライバーはホースから水道水を使ってバンパーに水を補給します。この素材は通常破裂することはないため、繰り返し使えます。
効果はいかほどに

技術テストに成功した後、一部の都市で100台ほどのタクシーがこの技術を導入しました。その結果は、当時の多くの人々を驚かせました。このバンパーの使用により修理費が56%も大幅に削減されたのです。
自動車保険の請求額は58%減少し、ダウンタイムコストは従来のバンパーに比べて50%減少しました。高速道路やターンパイクでよく見られる連鎖反応のような衝突事故も減りました。また、この技術を搭載した車両が事故に遭ったうち、車両へのダメージを報告したのはわずか18%でした。やがてこの水入りバンパーは警察やタクシー会社などにも普及しました。
従来のバンパーであれば、凹んだバンパーの修理には費用と時間がかかると思います。しかし、当時は水入りバンパーのダメージはほとんどありませんでした。
なぜ普及しなかったのか?

これらのバンパーの効果にもかかわらず、なかなか普及しませんでした。それにはいくつかの理由がありました。冬場は水が氷になり衝撃吸収材としてではなく、バタリングラムのようになる可能性がありました。
そして、車重が重くなることもこのバンパーの普及の妨げになったかもしれません。また、このバンパーはフェンダーに2つの黒い箱を取り付けた見た目をしています。よって見た目がよくない。というのもありました。
ですが、最大の理由は新しい衝撃吸収バンパーがより強力な衝突に対応できるようになったからです。水入りバンパーは予想以上に効果がありました。しかし、外観の悪さと安全技術の進歩により、このバンパーは姿を消したのです。
画像出典:David Rich