ファミリーカーとスポーツカーの融合。簡単なようで難しい。長い車の歴史の中でもこの両者を両立させている車両はそう多くない。しかし80年代後半に、これに挑戦していたのは、ミュンヘンに本拠を置くBMWというブランドだった。
当時異質と言われていたその車両は、求められるあらゆる面で安定した性能を発揮した。この車は一部のユーザーの熱烈な人気を獲得し、今もファンは少なくない。そして今、新しいBMW M5ツーリングとともにBMWワゴンが復活を遂げようとしている。
過去にワゴンに設定されたM5は、わずか2世代しかない。それらは、BMW M部門が生んだ希少でクールな車両として語り継がれている。その歴史をどのように作り上げたかを少し振り返ってみよう。
E34
BMWは1984年にM5を発表した。E28型5シリーズをベースに、さまざまな機械的変更、特に悪名高いM635CSiグランドツアラーと共通のM88型エンジンが搭載された。発売当時、E28型M5は世界最速の市販セダンだった。
その次の世代のM5・E34が歴史の始まりだった。1988年から1995年までのわずか7年間に製造され、BMWを象徴する直6エンジンを搭載したM5。瞬く間にヒットモデルとなった。
そして1992年のM5にはワゴンが設定された。これはBMW M部門が製造した史上初のツーリングカーであり、最後のハンドメイド車両でもあった。工場から出荷されたのは約900台で、12,000台ほどが生産されたノーマル・セダンに比べて極めて希少なモデルであった。
E61
BMW Mの次のツーリングモデルは、E61・M5だ。この世代は2004年にデビューし、7速パドルシフトと、より頑丈なマニュアルボックスが用意された。残念なことに、マニュアル・ギアボックスは米国市場限定、ワゴンは欧州市場限定だった。よって日本では発売されていない。
しかし、この世代のM5の最大の話題はV10エンジンだ。V10ガソリンエンジンを搭載した市販セダンを世界で初めてのものだった。ヨーロッパであれば、このエンジンをワゴンに搭載することができた。羨ましい限りだ。
それでもこの世代は5年しかもたなかった。この5年間で、BMWは約2万台のセダンを生産した。しかし、工場から出荷されたツーリング・モデルはわずか千台ほどだった。E61 M5ツーリング以来、2年前にM3ツーリングが登場するまで、BMW Mツーリングを見ることはなかった。
さらなる高みへ
先日、M5の第7世代として新しいM5ツーリングの正式発表があった。BMWはMラインナップの再設計をしたいと考えているようだ。その一端として最新で高性能モデルのツーリングバリアントを導入するという。
すでに世界各地で試験が行われており、写真も公開されている。ハイブリッドの搭載や新開発シャシーなどまだ細かいところまでは公開されていない。2024年のリリースが楽しみだ。