S14シルビアにセンチュリーのV12を移植した男たち

S14シルビアにセンチュリーのV12を移植した男たち コラム
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ドリフトは表現と言っても過言ではありません。路面に描くタイヤ痕と凄まじい煙に人々は魅了され、心の底から湧き上がるものを感じます。

D1ニュージーランドの選手、ジャロン・オリーブクロナもそのドリフトに魅了された一人です。本稿では彼の特別なV12エンジン搭載のS14シルビアについてご紹介いたします。

何か違う事をしたい

S14シルビアにセンチュリーのV12を移植した男たち

ジャロンはわずか12歳にしてKP スターレットでドリフトを始めました。ニュージーランドではドリフト競技がその黎明期を迎えたばかりで、煙と叫び声が上がるサーキットでジャロンはドリフト競技が未来であると確信しました。

やがてジャロンはS14シルビアに乗り換えましたが、SR20DETも長くは持たず、D1ニュージーランドの競技用に、高圧縮のRB26DETTに置き換えられました。

このエンジンも911馬力の扱いやすく応答性の高いパワーを誇りましたが、ジャロンは数シーズンをこのエンジンと過ごすうちに「何か違うことをしたい」と思うようになりました。

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同郷の強力助っ人

S14シルビアにセンチュリーのV12を移植した男たち

こうして選ばれたのがトヨタ・センチュリーに搭載されていた5.0L V12気筒 1GZ-FEエンジンです。 寸法上、このエンジンはまるでS14用に作られたかのように S14 のエンジンルームにフィットしたそうです。

このエンジンの搭載にあたり、ジャロンは経験、野心、革新性、そして何よりも少し常識外れのことに挑戦する意欲を備えたエンジン ビルダーを必要としていました。そこで現れたのがハートレー エンジン & モータースポーツのネルソン・ハートレーです。

ニュージーランドのハートレーと言えばそう、かつてトロロッソでF1を戦い、ポルシェやトヨタでWECにも参戦したブレンドン・ハートレーの兄です。

徹底的なリバースエンジニアリング

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ハートレー エンジン&モータースポーツのプロセスは、徹底的なリバースエンジニアリングから始まります。すべての部品が慎重に分析され、CAD モデル化され、評価されて、どこでパフォーマンスを最適化できるかを決定します。

トヨタ製V12はパフォーマンスの観点からそれほど優れているわけではないとネルソンは認めています。コンパクトな性質と軽量は良い点ですが、シリンダーヘッドとカムの配置には明確な課題があります。

しかしだからこそ、彼らはCAD テクニックを用いて、シミュレーションを繰り返すことで、高価なエンジンを犠牲にすることなくパワーアップを可能にしました。

ハートレーはバルブ、カム、リフター、カムギアをゼロから設計し、エンジンをドライサンプ化、CNC加工されたシリンダーヘッド、ラッパ状のファンネルを12個取り付けるなど、他にも様々なチューニングを行いました。

エンジンは独自のLink Thunder ECU を介して調整されており、巨大なトルクバンド、10,000rpmに迫るレブリミット、足元でのレスポンスの良さを実現しました。こうしてチューニングされた1GZ-FEは、最終的に700~800馬力を発揮するようになりました。

その後、新しいカムシャフト、排気システム、2つのMSEターボチャージャーが追加され、最終的に1,017馬力と大台に乗りました。

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理想としたマシン

S14シルビアにセンチュリーのV12を移植した男たち

車体のカスタマイズも進められ、リアセクションは一体型のクラムシェルデザインに改造され、サイドスカートやカーボンボンネットも特注品となりました。車体全体には、AWS GraphicsのAndrew Stewartによる鮮やかなカラーリングが施され、ニュージーランド原産の絶滅種フイア鳥のグラフィックも含まれています。

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内装には、カスタムのカーボンファイバーダッシュボードが取り付けられ、シンプルながらも機能的なレースカーの雰囲気が演出されています。ギアシフトはTTi 5速シーケンシャルボックスを採用し、油圧ハンドブレーキも備えられています。

このようにして、ジャロン・オリーブクロナが理想としたマシン、V12 シルビアは完成しました。彼がサーキットを美しく舞う姿はこちらからご覧いただけます。

写真:リチャード・オピー/speedhunters.com

この記事を書いた人

1999年 東京生まれ。幼少期を自動車大国アメリカで過ごし、車に興味を持つ。レンタカー屋やBMW正規ディーラーを経て都内高級中古車ディーラーに勤務。愛車はGR スープラ RZ。

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