ホンダは、創業当時から実用的で信頼性のある車を生み出すことで定評がありました。そして、その価格も大学生がシビックを所有できるほどの安いものでした。そんなホンダが当時の日本車最高額となるスポーツカー「NSX」を発売したとき、対照的なメーカーであるフェラーリやランボルギーニに一泡吹かせることになります。
ホンダは高級車ブランドによるスーパーカーの製造方法に革命をもたらしたのです。30年後、我々が知っている現代のスーパーカーやスポーツカーはすべて、初代ホンダ・NSX のおかげで存在しているかもしれません。その理由について見ていきましょう。
市販自動車としては世界初のオールアルミボディ

理想的なスポーツカーは、パワーウェイトレシオが小さければ小さい程良いとされます。これに対する古典的な解決策は、スポーツカーの重量に対抗するためにエンジン出力を上げることです。しかし、これにはハンドリングと加速の犠牲が伴います。さらに、重量が増すと外観が損なわれることもあります。
そこで、NSXのエンジニアたちは、より多くの馬力をスポーツカーに与えるのではなく、車をより軽くすることに決めました。
日本の新幹線にインスピレーションを受け、エンジニアはアルミニウムを使用し、NSXの車体重量を約200kg削減しました。このたった 1 つの行動が、スーパーカーの構成を永遠に変えました。
発売当時、ホンダ・NSX は全アルミニウムボディを備えた初の量産車でした。車体の軽量化により、NSXは優れた加速性とハンドリングを実現し、さらにミッドシップに搭載した3.0 L VTEC V6により比類のないパワーウェイトレシオを実現しました。
ホンダ・NSXによる軽量アルミニウムの採用は、自動車業界に大きな変革をもたらし、その影響は現代の量産車にまで及びます。テスラ・モデル S やランボルギーニ・ウラカン等、ほとんどの象徴的な車は、ホンダの革新的なデザインの影響を受け、ボディにアルミニウムを採用しています。
伝説のマクラーレン・F1はNSXからインスピレーションを得た

NSX登場から2年後の1992年にデビューしたマクラーレン・F1は、「スーパーカーの完璧とは何か」を定義しました。
マクラーレン・F1 はサーキット上で信じられないほどのスピードを発揮し、その見事なシルエットで見る者を魅了しました。この車のデザイナーであるゴードン・マレー氏はF1の開発にあたり、NSXをベンチマークとしていたことは、あまり知られていません。
1980年代後半、マレー氏は「究極の車」のアイデアに溢れていました。彼は、F1 の基準を設定するために、フェラーリ、ポルシェ、ランボルギーニなど、最高のパフォーマンスを誇る車に注目しました。そんな中彼がNSXを運転してみたとき、そのハンドリング能力に感銘を受けました。
マレーはF1にホンダ製エンジンを搭載することを望んでいましたが、最終的な量産バージョンはBMWモータースポーツによって設計された強力な627馬力のV12エンジンを搭載することになりました。これにより、F1 は強化された NSX に変わりました。
NSXがすべての現代スーパーカーの父である理由

1990年のNSXはホンダの実用的なスーパーカーでしたが、F1 はそのアイデアを取り入れてパフォーマンスを前例のないレベルまで引き上げました。今日でも、F1 は自動車エンジニアリングの驚異であり、いくつかの新世代のスーパーカーにインスピレーションを与えており、そのルーツはすべてホンダ・NSXに遡ります。
フェラーリ・360モデナ、ランボルギーニ・ディアブロ、そして私たちが知っている他のすべての偉大なスーパーカーは、上原茂郎氏のデザインからインスピレーションを受けており、まさに現代スーパーカーの父と言えるのです。