現代の車には、パワーシート、シートヒーターやシートベンチレーション、マッサージ機能など、さまざまな座席機能が備わっています。シートの快適性はドライバーと同乗者にとって不可欠ですが、同じく安全性も求められる重要な要素です。その中でもヘッドレストは最も見落とされがちな車の安全機能の1つだと思います。ヘッドレストは、自動車事故の際に非常に重要な装備であり、その有無は首の痛みや怪我、さらには死亡リスクなどに大きく関わります。そこで、車のヘッドレストを取り外してはいけない理由をまとめてみました。
車のヘッドレストが重要な理由

日本では1969年にシートベルトとヘッドレストの設置が義務付けられました。しかし、これは運転席のみで、助手席は1973年、後部座席は1975年に設置が義務付けられるようになりました。
これにより多くの運転手と同乗者が命にかかわる頭と首の怪我を防ぐことができました。
むち打ちとヘッドレスト

むち打ちは、可動域の減少と首のこわばりを引き起こす一般的な交通事故の怪我であり、低速で移動している場合であっても、引き起こされる怪我の一つです。衝突時に頭部が突然「跳ね返る」と、首が過伸展し、靭帯や神経に損傷を与え、慢性的な痛みや不快感を引き起こす可能性があります。
車のヘッドレストは衝撃を吸収し、適切に配置されていれば頭部を支えて、衝突時に頭部が後方に倒れるのを防ぎます。一方、ヘッドレストの位置が悪いと、衝突時に正常に機能しない可能性があるため、ヘッドレストがすべての乗員の適切な高さに一致するようにすることが重要です。
車のヘッドレストを外してはいけない理由

多くの自動車メーカーが最前列の乗員のための高度な座席オプションに全力を尽くしていますが、後部座席の乗客のニーズは見過ごされがちです。近年では改善されていますが、多くの車の後部座席は、前部よりも洗練されたヘッドレストがなく、後部中央の座席にはヘッドレストが無い場合もあります。
確かに、ヘッドレストを和訳すると「頭」を「休める」という意味になります。しかし、ヘッドレストの主な機能は、頭部を休める事ではなく保護です。ヘッドレストの取り外しは簡単ですが、重大な怪我につながる可能性があります。一部のドライバーは、ヘッドレストを取り外して、後部座席の視界を確保したり、後退時に外側の視界を確保したりします。しかし、それは決して良い考えではありません。
これらの車の安全機能を正しく使用する方法
ほとんどのドライバーは、車のヘッドレストを自分の体に合わせて調整していません。ヘッドレストの適正位置は、
・頭を後ろに傾けた時にヘッドレストの上部に乗り上げてしまうことがないような高さ
厚生労働省
・後頭部にできるだけ近づけた位置(前後調整ができる場合)
・ヘッドレストの中心が両耳のいちばん上のあたりになるような位置
などとされています。
場合によっては、車のヘッドレストが命を救うこともあるため、ヘッドレストを正しく配置することは決して当たり前のことではありません。ヘッドレストの位置が低すぎて後ろからぶつけられた場合、それが支点となり、極端な場合、頭が後ろに飛んでしまい、首を骨折することもあります。
すべての乗客のヘッドレストを適切に調整することは億劫かもしれませんが、むち打ち症やその他の深刻な首の怪我を防ぐことができます。そのため、運転を開始する前に時間をかけて正しい調整を行ってください。