自動車会社は常に革新に目を向け、競合他社をリードする策を常に模索しています。時にはテスラのヨークステアリングのように、伝統的な丸いステアリングホイールを捨てて、まったく新しいものに挑戦することさえあります。
しかし、メーカーが革新的なステアリングの開発に出たのはテスラが初めてではありません。今から60年前、フォードは笑えるほど危険なステアリングホイールを開発しました。しかし、テスラのヨークとは異なり、フォードのステアリング装置は(ありがたいことに)製品化されることはありませんでした。
フォードの「リストツイスト」回転機構
1960年代半ば、フォード・モーター・カンパニーは次なる “大革命”を求めて、自動車業界の枠を超えたところに目を向けました。「ニューヨーク・タイムズ」紙によれば、フォードはアメリカの国家ミサイル防衛システムの設計に携わったロバート・J・ランプフに、自動車のステアリング制御システムを「まるで別の惑星から来た人間のように研究し、より良いものを設計する」よう依頼しました。
ランプフはまさにそれを行い、この世のものとは思えない車を制御する方法、「リストツイスト(手首をひねる)」制御システムを作成しました。
リストツイストシステムは、丸いステアリングホイールを、2つのダイヤルに置き換えたものです。フォード・モーター・カンパニーは、リストツイストシステムは従来のホイールよりもかさばらず、室内がより広くなったと主張しました。
同社は1965年のプロモーション映画で手首をひねるシステムを宣伝しました。ナレーターは、ダイヤルを回すのに「軽いタッチだけ」で済むため、このシステムは使いやすさを高めるためにアームレストを追加しており、視認性も向上していると述べています。
1965年4月にポピュラー メカニクスが実施したテストによると、実際の使用では、手首をひねるシステムはまだ全く型破りで馴染みのないものだと評価しています。
記事の著者は、「ダイヤルを回すたびにガクンと音がして、車がしゃっくりをするカンガルーのように感じられる」とも述べています。また、フルロックステアリング中に「パワーステアリングのブーストが足りなくなる」とも述べてました。
このステアリングは確かに画期的ですが、緊急時の操作性に難があり、実用化されていれば今よりも多くの死者が出ていた事でしょう。
伝統的なステアリング・ホイールが最善である
フォードの手首をひねるハンドル機構がテストされるほんの数年前、シボレーはコルベア・テスチュードというコンセプトカーで、今日まで生き続けるハンドルデザイン、D型ステアリング・ホイールを予告していました。おそらくC8コルベットのエンジニアは、1963年のコンセプトからヒントを得て、現代のステアリング形状を開発したのでしょう。
また、1985年のマツダMX-03コンセプトには民間旅客機タイプのヨークステアリングが採用されており、1年後のオールズモビル・インカには戦闘機から取り出したようなヨークステアリングが採用されました。
最近では、1999年に発表されたBMW Z22コンセプトが、四角い “ホイール “を採用し、リアビュー・ディスプレイの拡大・縮小を操作できるようになっていました。このコンセプトには、ヘッドアップディスプレイと指紋スキャナーも搭載されており、このコンセプトは自動車の次の革新的な機能のいくつかを予言していたと言えます。
これらのコンセプトはいずれも市販されることはありませんでしたが、いくつかの型破りなステアリング・ホイールは市販されました。
例えば、スパイカーC8スパイダーには、飛行機のプロペラからデザインのインスピレーションを得た4本スポークのホイールが装着されており、パガーニ・ゾンダRは、タコメーターをハブの中央に配置しました。
これらは確かに、フォードのリスト・ツイスト・システムほどヘンテコではなく、合理的なものだったと言えます。
ステアリングはドライバーが最も多く触れる部分であり、視界に常に映るものです。そんなステアリングはこれからも様々なアイデアが生まれ、ヨークステアリングのように斬新なデザインが市販車にも採用されるかもしれません。
次はどのようなデザインが登場するのでしょうか?想像するだけで心が躍りますね!